中学受験、高校受験、大学受験の研究所

受験には、よく言われていることがたくさんあります。「早く始めたほうが有利」「量をこなせば伸びる」「親は口を出さないほうがいい」「部活をやめれば成績が上がる」「浪人すれば伸びる」「スマホを取り上げれば集中する」——。

当研究所は、これらを実際の研究にあたって検証します。体験談や印象ではなく、査読を経た論文を引き、効果量を示し、再現されなかった研究や反証も併記します。


検証した通説

1.「早く始めたほうが有利」は本当か

優位は実在する。しかし縮んでいく。学年で最も若い子は4年生時点で4〜12パーセンタイル低く、その差は約0.2標準偏差で安定している。ところが成人後には、数学と読解への効果は消えていた。そして1歳年上の子は、入学時の学力は高いが1〜2年生では伸び率がむしろ低い。優位の正体は「持ち点」であって「伸びる力」ではない。

2.「量をこなせば伸びる」は本当か

逆U字。転換点は測定されている。中国の8年生では1日45分、台湾では90分を超えると効果が消え、スペインでは1日1時間が最適。そして最も重要な発見——スペインの7,451人の分析で、最も効いた変数は「自律性」であり、努力でも時間でもなかった。頻繁に、質高く取り組めば、30分で110分と同じ成果が出ている。

3.「親は口を出さないほうがいい」は本当か

関与全体はプラス。しかし「宿題を手伝う」だけが負。448研究・48万家族のメタ分析で、関与は成績と正の関連(r = .13〜.23)。ところが宿題の手伝いだけが唯一の例外で、負の関連(r = −.15)だった。37万人の分析では、正の関連を示した唯一の次元は「自律性支援」。内容を教える支援は、成績とほぼ無関係だった。

4.「部活をやめれば成績が上がる」は本当か

日本の追跡研究2本は、やめた生徒のほうが下がったと報告している。847人を中1から中3まで追跡した研究では、続けた群は5教科すべてでやめた群より高かった。運動部だけでなく文化部でも同じ。463人の別研究では、やめることが心肺体力の低下を介して成績と負に関連していた。

5.「浪人すれば伸びる」は本当か

最良の推定値はゼロ。そして研究の質で結論が逆転する。84研究のメタ回帰では平均効果ゼロ。さらに質の低い研究ほど「悪い」と出て、質の高い研究ほど差がないと出ることが判明している。大学でのやり直しを調べた研究では、成績は0.5標準偏差上がる一方、中退確率も10ポイント上がっていた。

6.「スマホを取り上げれば集中する」は本当か

取り上げる実験は行われていて、成績は上がらなかった。無作為化実験でスクリーンタイムの削減には成功したが、学業成績への効果は検出されなかった。イングランドの30校を比較した研究でも、校内で禁止しても総使用量は変わらなかった。効いている経路は睡眠である可能性が高い。


この研究所の方針

確証が得られないことは、「得られない」と書きます。

本サイトの記事には、必ず「この記事の限界」という節があります。研究の対象が日本の文脈と異なる場合(たとえば入学年齢の研究は塾の開始学年とは別の問い、留年の研究は浪人とは別の制度)は、冒頭で明示します。

結論が割れている分野では、割れていると書きます。都合のよい研究だけを引いて断定することはしません。

受験は一度きりで、やり直しがききません。だからこそ、根拠の強さを正直に示すことが、最も誠実な情報提供だと考えています。


この研究所について

当研究所は、受験にまつわる「よく言われていること」を、実際の研究にあたって検証しています。広告や体験談ではなく、査読を経た論文を引き、効果量を示し、再現されなかった研究や反証も併記する方針です。

確証が得られない事柄は「確証が得られない」と書きます。研究の対象が日本の文脈と異なる場合は、そのことを明示します。結論を急がないことが、受験生と保護者にとって最も有益だと考えるからです。

運営

本研究所は、東京都武蔵野市の武蔵野個別指導塾が運営しています。JR中央線・武蔵境駅の個別指導塾です。

ここで整理した知見は、そのまま日々の指導に使っています。「量をこなせば伸びる」ではなく転換点を見る。「早く始めたほうが有利」ではなく理解できる状態かを見る。根拠のある方法で、一人ひとりに合わせて進めます。

進路の判断に迷ったら、ご相談ください。「早く始めるべきか」「部活をやめるべきか」「浪人すべきか」——本記事で扱ったような判断は、一般論では決まりません。お子さんの状況をうかがったうえで、根拠を示しながら一緒に考えます。